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小林千晃=クール・ダウナーキャラの払拭? 「自分の中にない、“演じにくい”と思う役を任されてからが本番」

TVアニメ『超電磁マシーン ボルテスV』が熱狂的な支持を受けるフィリピンで実写化を果たした映画『ボルテスV レガシー』“超電磁編集版”が、現在絶賛公開中。さらに、再編集された“超電磁リスペクトTV版”が11月12日よりTOKYO MXで放送される。

このたび、主人公であり、ボルトマシン1号機パイロットのスティーヴ・アームストロングの吹替えを務める小林千晃にインタビュー。「アニメも吹替えも使い分けたりしない」というスタイルを学んだ先輩についてや、クール・ダウナーキャラの印象が強い彼が目指す声優像・役者像などを聞いた。

[文・取材=米田果織 撮影=You Ishii ヘアメイク=佐藤由貴 スタイリング=ヨシダミホ]

――映画『ボルテスV レガシー』の日本凱旋作の主人公役に決まったときのお気持ちは?

僕よりも上の世代の先輩方も原作を好きなイメージがあったので、その先輩方を差し置いて僕が主人公でいいのかな、という葛藤がありました。

また、フィリピン版を見た時に、とても気合いが入った作り込みをされていて、俳優さんたちの演技の熱量にも驚かされました。そんな愛溢れる作品に出演することもプレッシャーには感じたのですが、少しでも僕が日本語で乗せられるものがあれば、ぜひ一緒に作品を盛り上げたいという気持ちになりました。

――そんな俳優さんの熱量を「声」で表現する上で大事にしたことは?

原音のイントネーションです。まず「ボルテスV」という単語も英語と日本語でイントネーションが違うので、どちらに合わせるのか何度もテストや話し合いを重ねました。その結果、せっかくの日本語吹替えということで、アニメ原作に合わせる形になりました。

演じる上で大事にしたのは、叫びの演技です。叫びの演技って、一辺倒になりやすいんですよ。このシーンで叫んでいるスティーヴは誰に対して怒っているのか、何を意識しているのかをしっかり理解しないと、似たり寄ったりなニュアンスの叫びになってしまう。そこはとくに意識して演じた部分でした。

――アニメのアフレコと実写作品の吹替えでは、意識する箇所は変わってきますか?

それは確かにあるのですが、この作品に関しては、フィリピン版の制作陣の方々が『ボルテスV』をとてもリスペクトして作ってくださっているので、その原作アニメの“イズム”みたいなものが乗っかっていた分、あまり違いはありませんでした。……と言いつつも、僕は他の作品でもアニメと吹替えで使い分けたりしないタイプではあるんですけどね。

――それは何か理由があって?

これまで僕が吹替えで参加した現場で活躍されている先輩方が変えていなかった、というのが一番の理由です。尊敬する方々が変えていないのであれば、僕もそのスタイルを貫きたいと思っています。

――その憧れた先輩というのは?

ズバリこの方、という人はいないのですが……いや、たくさんいすぎると言ったほうがいいのかな(笑)。うちの事務所だと、東地宏樹さんや内田直哉さん。吹替えの現場では、本当にお世話になってばかりです。その方々の背中を見て育ったと言っても過言ではない。一緒に飲みに行ったときにもお芝居の話になりますし、とても勉強になります。

――やはり役者さん同士だと、演技論など語り合うんですね。

アニメだけではなく、舞台も実写も吹替えもすべて演じられている方々なので、芝居への考え方が凝り固まっていないんです。大きなスケールで話してくれるので、相談に対する答えも柔軟で、話していて面白いといつも思います。お酒が入りすぎると、何を言っているかわからなくなるんですけど(笑)。

――スティーヴ・アームストロングは、これまで小林さんが演じた役からはあまり想像できない熱血漢なキャラクターでした。役はオーディションで決まったのですか?

いえ、ありがたいことに指名していただきました。

――『地獄楽』の画眉丸や『マッシュル-MASHLE-』のマッシュなど、内に秘めた熱さはあるものの、一見クール・ダウナーといった印象のキャラクターを演じることが多いように感じていたので、少し以外な配役でした。

確かにそういったイメージが強いかもしれませんが、意外と熱血な役も演じてはいるので、自分の中ではそこまで珍しい役ではありませんでした。ですが、吹替えでここまで熱量の高い作品・キャラクターは初めてで、さらにアニメ的表現を求められることも初めてだったので、一体何を見て僕を選んでくれたのか気になりますね。

――スタッフさんいわく、「原作アニメで剛健一役(※フィリピン版のスティーヴ)を演じた白石ゆきながさんが、早めに引退されたこともあって、ファンの間で伝説的な存在に。それに勝てるような個性のある方がいいと探している中に、少しさびの入っている小林さんの声がいいと思ったのと、ジャンプ系の主人公をよくやられているけれど、熱血漢なスティーヴが他の役を想起させないという理由で選んだ」とのこと。予告映像を出したときも、まったく反発もなかったそうです。

おお! なかなか起用理由を教えてもらえる作品はないので、ありがたいですね。反発がなかったということで、よかったです。

――今のコメントにも「熱血漢な役が他の役を想起させない」とありましたが、小林さん=クール・ダウナーキャラと印象付けたと思う作品は何なのでしょうか。ご自身で思いつくものはありますか?

どうなんでしょう。僕の中では「とくにこの作品」というのはないかもしれません。僕自身も普段からそんなに明るい「ウェ~イ!」ってタイプではないですし(笑)。楽しさを共有するよりも、勝手に自分の中で楽しんでいることのほうが多いです。そんな普段のテンションとわりと近いキャラクターを任せていただく機会が多く、それが印象に繋がったのではないでしょうか。

あと、これは僕だけに限ったことではないんです。新人の頃って、自分と近い役を任せていただくことが多いんですよ。先輩が「若手の頃は自分がやりやすい役に出会えるようにできている」と言っていました。そして、「自分の中にない、“演じにくい”と思う役を任されてからが本番」だと。売れているように見えても、同じような役ばかり演じている人もいるんです。10代から50代、青年からおじさんまで演じられるようになってからが「本当の声優」だと先輩が言っていたように、僕もその“本当の声優”になりたい。今は演じやすいクールなダウナーキャラが多いですが、これからはもっといろいろな役を演じていきたいです。

――それでいうと『GREAT PRETENDER』のエダマメ(枝村真人)のような役は、小林さんの中にないものが引き出される役だったのでしょうか。

う~ん……エダマメも決して明るいキャラクターではないからなぁ。鬱屈としているし、諏訪部順一さん演じるローランに弄ばれて怒り狂っているだけで、エダマメも僕の中にあるものを出した役でした。ですが、新人の頃の、自分の中にある少ない引き出しを必死に開いて頑張っていたなと思い出しました(笑)。

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